
健康診断で「LDLコレステロールが高い」と指摘されたことはありませんか?
コレステロールが高くても、痛みや息切れなどの自覚症状が出ることはほとんどありません。そのため、「少し高いだけだから大丈夫」「症状がないから治療しなくてもよい」と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、血管の壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化が進行する原因になります。将来的に心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクにもつながります。
一方で、LDLコレステロールが高ければ、誰でもすぐに薬を飲まなければならないというわけではありません。年齢や血圧、糖尿病の有無、喫煙歴、過去の病気などを含めて、総合的に判断することが大切です。
今回は、循環器専門医の立場から、LDLコレステロールの基準値や高くなる原因、治療が必要になる目安について解説します。
1.LDLコレステロールとは?悪玉コレステロールと呼ばれる理由
コレステロールは、細胞膜やホルモンなどを作るために必要な脂質の一種です。体にとって欠かせない成分ですが、血液中の脂質のバランスが崩れると、動脈硬化につながることがあります。
健康診断で測定される主な脂質には、次の3つがあります。
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LDLコレステロール(悪玉コレステロール):肝臓から全身の組織へコレステロールを運びます。過剰になると血管壁に蓄積し、動脈硬化を進める原因になります。
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HDLコレステロール(善玉コレステロール):余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す働きがあります。
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中性脂肪(トリグリセライド):体を動かすエネルギー源になります。高値が続くと、脂質異常症や動脈硬化のリスクに関係します。
特にLDLコレステロールは、動脈硬化との関係が深く、心筋梗塞や脳梗塞を予防するうえで重要な指標です。
2.LDLコレステロールの基準値は?
日本動脈硬化学会の診断基準では、LDLコレステロールは次のように分類されています。
| LDLコレステロール | 判定 |
|---|---|
| 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| 120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| 120mg/dL未満 | 上記の診断基準には該当しない |
ここで注意したいのは、140mg/dL以上だから必ず薬が必要、120mg/dL未満なら絶対に安心、という意味ではないことです。
例えば、糖尿病や高血圧がある方、すでに心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある方では、LDLコレステロールの管理をより厳格に行う必要があります。
反対に、他に大きな危険因子がない方では、生活習慣の改善から始める場合もあります。
診断基準と、治療で目指す管理目標値は異なります。数値だけで判断せず、全身の状態を確認することが大切です。
3.LDLコレステロールが高いと、なぜ危険なの?
LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールが入り込み、動脈硬化が進行します。
血管の内側にコレステロールなどが蓄積すると、プラークと呼ばれる病変が形成されます。プラークによって血管が狭くなったり、破れて血栓ができたりすると、血液の流れが急に悪くなることがあります。
その結果、次のような病気につながります。

動脈硬化の進展
心筋梗塞・狭心症
心臓に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こると、血管が狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなります。
これが狭心症です。さらに血管が血栓で詰まり、心臓の筋肉が壊死してしまう状態が心筋梗塞です。
心筋梗塞は命に関わることもある重大な病気です。
脳梗塞
脳の血管が動脈硬化によって狭くなったり、血栓によって詰まったりすると、脳梗塞を起こすことがあります。
手足の麻痺や言葉が出にくい、視野が欠けるなどの症状が突然現れることがあります。
末梢動脈疾患
足の血管に動脈硬化が起こると、歩行時にふくらはぎなどが痛くなり、休むと改善する症状が出ることがあります。
進行すると、安静にしていても痛みが出たり、足の傷が治りにくくなったりすることがあります。
このように、LDLコレステロールの管理は、単に健康診断の数値を改善するためではなく、将来の心臓病や脳卒中を予防するために重要なのです。
4.LDLコレステロールが高くなる原因は?
LDLコレステロールが高くなる原因には、生活習慣だけでなく、体質や病気が関係する場合もあります。
食生活
肉の脂身、バター、生クリーム、加工肉などに多く含まれる飽和脂肪酸を摂りすぎると、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。
また、食物繊維の摂取が少ないことも、脂質のバランスに影響します。
運動不足・肥満
運動不足や内臓脂肪の蓄積は、中性脂肪やHDLコレステロールなどの脂質バランスを悪化させる原因になります。
適度な運動や体重管理は、脂質異常症の改善に役立ちます。
遺伝的な体質
食生活に気をつけていても、LDLコレステロールが高くなる方がいます。
その代表的な病気が「家族性高コレステロール血症」です。遺伝的な原因によって、生まれつきLDLコレステロールが高くなり、若い年齢から動脈硬化が進みやすくなります。
他の病気や薬の影響
甲状腺機能低下症や腎臓の病気などが原因で、コレステロールが高くなることもあります。
生活習慣だけでは説明できない場合には、こうした病気が隠れていないか確認することも大切です。
5.LDLコレステロールが高ければ薬を飲むべき?
これは診察でよくいただく質問です。
結論からいうと、薬を始めるかどうかは、LDLコレステロールの数値だけでは決まりません。
治療方針を決める際には、次のような項目を確認します。
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年齢や性別
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血圧や高血圧の治療状況
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糖尿病の有無
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喫煙歴
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慢性腎臓病の有無
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家族に若い年齢で心筋梗塞などを発症した方がいるか
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過去に心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを起こしたことがあるか
同じLDLコレステロール160mg/dLでも、他に危険因子がない方と、糖尿病や高血圧を合併している方では、将来の心血管疾患のリスクが異なります。
そのため、治療の必要性や目標値も一人ひとり異なります。
生活習慣の改善から始める場合
動脈硬化のリスクが比較的低い方では、まず食事や運動などの生活習慣を見直し、脂質の変化を確認することがあります。
薬物療法を検討する場合
LDLコレステロールが高い状態が続く場合や、糖尿病などの危険因子がある場合、すでに動脈硬化性疾患を起こしたことがある場合には、薬物療法を検討します。
特に心筋梗塞や狭心症の既往がある方では、再発予防のためにLDLコレステロールをしっかり下げることが重要です。
6.コレステロールを下げる薬にはどんなものがある?
脂質異常症の治療では、患者さんの状態に応じて薬を選択します。
スタチン
LDLコレステロールを下げる代表的な薬です。
肝臓でコレステロールが作られる働きを抑え、血液中のLDLコレステロールを低下させます。動脈硬化性疾患の予防効果が確認されており、脂質異常症治療の中心となる薬です。
エゼチミブ
小腸でのコレステロール吸収を抑える薬です。
スタチンだけでは十分にLDLコレステロールが下がらない場合や、スタチンの使用量を調整したい場合などに併用することがあります。
PCSK9阻害薬など
LDLコレステロールが非常に高い方や、心筋梗塞などの再発リスクが高い方などでは、注射薬を含む追加治療を検討することがあります。
薬にはそれぞれ特徴や注意点があります。自己判断で開始・中止せず、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。
7.コレステロールを下げるために日常生活でできること
薬物療法が必要な場合でも、生活習慣の改善は重要です。
食事を見直す
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肉の脂身や加工肉、バターなどの摂りすぎを控える
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魚や大豆製品を取り入れる
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野菜、海藻、きのこ、豆類など食物繊維を多く含む食品を摂る
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揚げ物や菓子類など、脂質やエネルギーの摂りすぎに注意する
極端な食事制限をする必要はありません。無理なく続けられる食習慣を目指しましょう。
適度な運動を続ける
ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にすることは、脂質の改善や体重管理に役立ちます。
まずは日常生活の中で歩く時間を増やすなど、できることから始めてみましょう。
禁煙する
喫煙は動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。
コレステロールの管理と合わせて、禁煙に取り組むことも大切です。
8.家族性高コレステロール血症に注意
LDLコレステロールが高い方の中には、「家族性高コレステロール血症(FH)」という遺伝性の病気が隠れている場合があります。
この病気では、生まれつきLDLコレステロールが高く、若い年齢から動脈硬化が進行しやすい特徴があります。
成人では、未治療時のLDLコレステロールが180mg/dL以上であること、アキレス腱の肥厚や皮膚の黄色腫、家族歴などが診断の手がかりになります。診断には複数の項目を確認する必要があります。
特に、次のような方は注意が必要です。
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LDLコレステロールが180mg/dL以上と高い
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親や兄弟姉妹に高コレステロール血症の方がいる
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家族に若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる
家族性高コレステロール血症は、早期に発見して治療することが重要です。該当する可能性がある方は、医療機関で相談してください。
9.健診でLDLコレステロールが高いと言われたら、何科を受診すればよい?
LDLコレステロールの異常を指摘された場合は、内科や循環器内科で相談できます。
特に、高血圧や糖尿病を合併している方、喫煙歴がある方、家族に若くして心筋梗塞を発症した方がいる場合には、動脈硬化のリスクを含めて評価することが大切です。
診察では、健診結果を確認し、必要に応じて血液検査や血圧測定などを行います。持病や家族歴、生活習慣なども確認しながら、治療の必要性を判断します。
健康診断の結果をお持ちの方は、受診時にご持参ください。
10.まとめ:コレステロールは症状がなくても管理が大切
LDLコレステロールが高くても、ほとんどの場合、自覚症状はありません。
しかし、高い状態が続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などにつながる可能性があります。
大切なのは、健診の数値だけで一喜一憂するのではなく、ご自身の年齢や血圧、糖尿病の有無、家族歴などを含めて、将来のリスクを評価することです。
「薬を飲むほどではないだろう」と自己判断せず、健診で異常を指摘された方は、一度医療機関で相談してみてください。
当院での脂質異常症の診療について
西宮市・門戸厄神の「たまる循環器内科・静脈瘤クリニック」では、LDLコレステロールや中性脂肪の異常を含め、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の診療を行っています。
循環器専門医・高血圧専門医として、検査結果の数値だけでなく、血圧や糖尿病、喫煙歴、家族歴なども踏まえ、心筋梗塞や脳梗塞を予防するための診療を大切にしています。
「健診でコレステロールが高いと言われた」
「薬を飲む必要があるのか相談したい」
「家族に心筋梗塞になった人がいて心配」
このような方は、お気軽にご相談ください。
執筆者
田丸 裕人
たまる循環器内科・静脈瘤クリニック 院長
循環器専門医・高血圧専門医。心臓や血管の病気の診療経験を生かし、生活習慣病の管理や心筋梗塞・脳卒中の予防に取り組んでいます。
参考情報
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個々の患者さんの診断や治療方針を決めるものではありません。実際の治療については、医師にご相談ください。




